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8時半になれば担任の皇がやってくる。響也は自分の席へと戻って行った。 「おはよう。今から体育館で全校集会が開かれます。HRが終わったらすぐに体育館へ行くようにしてくださいね」 相変わらず女子が好きそうな笑窪を振り撒いている担任の話は右から左に聞き流す。どうにも奴の笑顔は胡散臭くて好きじゃない。 ま、好きな笑顔なんてないけど。みんな同じような顔してるし。人の顔に大して興味もないしな。 一瞬、今朝の眠たげな顔のくせにやけに眩しく見えたプラチナブロンドの髪色を持つ彼女が思い浮かんだが。すぐに振り払った。 「それじゃ、いつものように防犯対策として窓は鍵をしっかり閉め、カーテンも閉めといて下さい。学級委員は電気の消し忘れがないように。貴重品なども置き忘れしないように」 皇の言葉を合図に生徒は立ち上がり、前の席の奴はカーテンを閉めている。俺も一応窓側だから自分のすぐ横にあるカーテンを閉めた。 去年からうちの高校は防犯対策を強化し始めた。今日のように全校生徒が集まる集会は教室が空っぽになる。 1年の財布がいくつか盗まれたことがきっかけらしく、教室に誰もいなくなると教師が外から鍵をかける。 集会が終わるまでは入れないから、貴重品や携帯などは絶対に手放せない。 「トッキー行こ~」 「あぁ」 響也と共に人の波の流れに乗って廊下へと出る。すると待っていたかのように天磨と和遥に会った。 「はよっ!!」 「お、おおはよう…ござい、ますっ」 「おはよ~」 「おっす」 そのまま自然に4人で体育館へと向かう。歩きながらも天磨はうざかった。和遥が可哀想だった。 そしてもう慣れた位置に着き、全校生徒が集まり終わるのを待つ。たまに教師の怒鳴り声なんかも聞こえてきて、若いなぁなんて思った。 .
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