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学校に着き教室に入ると、最近では日課になりつつある光景を目にすることになる。
俺たちはいつも朝のHRが始まるギリギリに教室に辿り着くわけで、クラスメイトたちのほとんどは既に登校していた。だから、ガラッと扉を開ければ。
「白桜ちゃーん!!おっはよー!」
「今日も美しい…お人形さんにしたいいぃぃぃ」
「今日こそヘアアレンジさせて下さいっ」
「あぁっ!!その白くてスベスベのお肌に今すぐ吸い付きたい…」
今まで静かだと思っていた女子のクラスメイトたちが玖珂白桜の姿を目にした瞬間、わっと虫のように集ってくる。俺と響也は女子の気迫に押されて教室の中にすら入れていない。
囲まれている玖珂白桜と言えば、困ったようにおろおろしてはいるけどどこか嬉しそうで、ご丁寧にも1人1人相手していた。
「…この光景、これからも毎日続くのかなぁ」
「……めんど」
俺と響也は目を合わせて、お互いにため息を吐いた。
夏休み明け、玖珂白桜は女友達が欲しかったらしく、自らクラスメイトの女子たちに「お、おはよう…ございます…」と声をかけた。
……のが、いけなかったらしい。もうそこからは、本当に今までの女子生徒なのかと疑うほどに女子たちは玖珂白桜に寄って集って話しかけ始めた。
どうやら女子というものは可愛いものが好きらしい。そしてお人形のような玖珂白桜と友達になりたいと思っていたらしい。…何か下心がありそうだなと思うのは俺だけか?
まぁ結果的には、今まで散々な態度をとってきたから相手にされないかもしれないと不安がってた玖珂白桜の思いは見事に打ち砕かれ、むしろ嬉しそうだからよかった。
“よかった”……??
うわ、何だそれ。俺が他人に対してよかったとか思うわけないっつーの。うわ、気持ち悪っ。あり得ないあり得ない。
意味もなく頭を振り、玖珂白桜と女子生徒で塞がれていないもう1つの入り口から教室の中に入った。
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