6

4/19
前へ
/275ページ
次へ
2学期が始まってからというもの、玖珂白桜の学校生活はこれまでのものとは比べものにならないほど見違えた。 最初こそは人と話す度に肩に力が入り怯えた様子すら見せていたが、この1週間で女子生徒となら日常会話は少しずつ出来るようになっていた。 だが男子生徒から話しかけられると一瞬、グレーの瞳に恐怖の色を宿し、上手く話すことが出来ないらしい。 何故、俺や響也たちは大丈夫なのか本人も不思議に思っていたが、響也と初めて話した時はパニックを起こしていたらしい。 その時の様子を響也から聞いたが、ボロボロ泣いていたから響也との接触も最初は恐怖を感じていたんだろう。 だが、次第に響也には心を開くようになって、そんな響也と一緒にいることの多い俺や天磨、控えめの和遥には割と最初から恐怖心は少なかったらしい。 あんなに無表情だった玖珂白桜も、少しではあるが感情を表情に出すようになってきている。きちんと授業も起きて聞き、昼になったら女子生徒に強引に腕を引っ張られながら一緒にお昼を食べる。 普通の、女子高生らしい高校生活をようやく今、楽しんでいるというような感じだった。 だが1つ、不思議でたまらないことがあった。それはもちろん、あの玖珂家の人間だ。 俺はその場にいなかったが、玖珂白桜がウサギを追いかけ家を出たところを宇賀神が見つけ、天磨の家に上がった時はその日のうちに玖珂聖瑛と言う奴がどんな手を使ったのか知らないが、迎えに来た。 その日のうちにじゃなくても、玖珂白桜が家にいないことが分かれば何が何でも見つけ出しそうなのに、そんな様子も全くなかった。 玖珂家の人間が響也の家に来たらどうするか、と俺と響也と宇賀神が集まり話し合い、絶対に家に帰すことだけは阻止しようとしていたのだが。それは、全く無意味なものとなった。 .
/275ページ

最初のコメントを投稿しよう!

468人が本棚に入れています
本棚に追加