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そして、新学期が始まっても尚、皇の態度は以前と何ら変わりはなかった。敢えて言うならば、玖珂白桜を普通の生徒と接する時と同じように声をかけるくらいだ。
人前で初めて声をかけられた玖珂白桜は大きく動揺を見せていたものの、普通すぎる皇の態度に呆気にとられ、最終的にはとても悲しそうな表情をしていた。
恐らく、玖珂家の人間に見放されたとでも思っているんだろう。それは自由を手に入れた嬉しさと同時に、今までのは何だったのだろうと言う困惑と虚しさを感じたはずだ。
玖珂家の人間が何を考えているのかは全く分からない。あれほど、玖珂白桜に執着していたと言うのにあっさり手放した。
何はともあれ、毎晩、日替わりに4人の男に抱かれることから解放されたことに変わりはない。それが一番気掛かりだった響也たちには一先ず安息の日々が戻ったと言える。
……別に俺には、玖珂白桜が誰に抱かれようが関係ない。ただ、玖珂家の人間のやり方が気に食わなかっただけで…個人的な感情は、玖珂白桜に持っていない。
そして今日も決まった時間に皇が教室に入って来て1日が始まった。俺の2つ後ろの席に座る玖珂白桜がどんな表情で皇を見ているのかは分からない。
別にどんな表情をしていたって俺には関係ないが……。玖珂白桜がもの耽っていたり、儚げな雰囲気を無意識に出すとクラスメイトがうるさい。ただ、それだけだ。
2時限目と3時限目の休み時間になると、隣のクラスから天磨と和遥がやってくる。これも新学期が始まってからの、毎日の光景だ。
「姫ー!!明日は土曜だろっ?だからどっか遊びに行こうぜ!!!」
「ちょっとテンテン~。遊びに行く前提みたいな言い方なんだけど~」
「いいじゃんかっ。しりゅーも誘ってみんなで遊ぼうぜ!!」
「じ、自分は…ゆゆ夕方からじゅ、塾なので…そっ、それまで、なら…っ」
「まぁ、オレもハクちゃんと遊びたいけどさ~」
勝手に話が進められて行く中、玖珂白桜は小さな幸せを噛みしめるように優しく微笑んでいた。
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