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それからお姫様はミニチュアダックスフンドのチョコとショコラ、三毛猫のリンに出会って2秒で懐かれ、とても楽しそうに遊んでいた。 本当に動物が好きなんだなとお姫様の表情で分かる。ほのぼのとした、柔らかい空気に俺は癒される。天たちも見たことのないような甘い視線を始終、お姫様に向けていた。 天が作ってきてくれたお弁当をみんなで食べて他愛のない会話をする。それだけであっという間に時間は過ぎて行き、カラスの鳴く時間になった。 「志龍さん、今日は本当にありがとうございましたっ。とても楽しかったです…!!」 「俺も楽しかったぜ。またいつでも来いよなー」 「はい…っ」 玄関でご丁寧に頭を下げたお姫様の頭を撫でる。お姫様の両隣から痛い視線を感じるが、そんなのは気にしない。 天と和とも別れの挨拶をして、お姫様を真ん中に歩き出した3人の背中を見えなくなるまで見送った。 俺はお姫様たちと高校が違うからたまにしか会えない。だから休日にお姫様が家に来て、楽しかったと言い残して帰ってくれたということは次に繋がる。 またお姫様がいつでも来てくれるように、動物たちの様子を写メって五十嵐のLINEに送っておこう。きっと、お姫様に見せてくれるはずだ。 写メを見て優しく微笑むお姫様の姿が容易に想像できて、頬が緩む。これからのバイトがいつもより頑張れそうだ。 そう思いながら、もう見えないプラチナブロンドが揺れていた道の先を見据え、バイトに行く準備をするために家の中に戻った。 気持ちのいい、晩夏の夕暮れだけを残して。 .
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