1

15/20

468人が本棚に入れています
本棚に追加
/275ページ
担任はいなかったから別のクラスの担任にトイレに行くことを伝えて体育館用のトイレへと向かう。しかしトイレのドアの前にあった張り紙を見て、舌打ちをした。 『工事中』 そう言えばそうだった。今体育館のトイレは壁が壊れたとかで工事中だったな。 仕方なく俺は校舎の方に向かった。1年のトイレでも借りよう。3年は3階だから必然的に1年は1階。体育館を出て足早に男子トイレに入った。 スッキリしたところで体育館に戻ろうと職員室前を通り渡り廊下をでたところで。ふと後ろを振り返った。 振り返ったのは、何となくだった。何となくだったが、居るような気がした。あのプラチナブロンドが。 そしてそれは、当たった。プラチナブロンドの髪が揺れて、とある部屋に入って行ったのを一瞬だけ見た。 関係ない。興味ない。彼女がどこで何をしていようが、どうでもいい。頭の中でただそれを繰り返しているのにも関わらず、行動は反比例していた。 吸い寄せられるようにして彼女が入って行った部屋の前に立つ。そこは。 『校長室』と書かれていた。 彼女が全校集会に出ているところを見たことはない。教室にはさすがに教師も残させていないから、保健室で寝ていると聞いたことがある。 しかし今、彼女は間違いなくこの部屋に入って行った。どういうことだ。何で校長室何かに入れるんだ。 気にせずに体育館に戻ればいい。だって俺には何の関係もないんだから。そう、思ってはいるのに。 ひどく落ち着かないこの気分は、一体何なんだろう。俺らしくもない。 金持ちのお嬢様だから校長室の出入りは許されているのかもしれない。別に大きな意味はないのかもしれない。 だから、ただ本当にこの部屋にいるのか、それだけを確認したい。そう、確認するだけだ。 誰に対してなのか分からない言い訳を心の中で繰り返し。静かに、そっと、ドアの取っ手に触れた。 .
/275ページ

最初のコメントを投稿しよう!

468人が本棚に入れています
本棚に追加