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校舎を出ると、身体の中まで射通すかのような太陽光に瞼が重くなる。全学年の生徒たちが同じようにグラウンドへと向かう中、何故か四方八方から視線を感じた。
普段から人の視線を感じることはあったけれど、今日は一段と多いような気がする。ふと隣の響也さんを見上げると、すぐに気付いた響也さんはニコッと微笑んだ。
こっそり盗み見ようとしたのにすぐにバレてしまったことが恥ずかしくて、きゅっと口角を上げてすぐに顔を前に戻す。
なるほど、響也さんがいつもと髪型が違うから視線が多いのかもしれない。それにハチマキも似合ってるし、とてもカッコいい。
それに加えて反対側にいる叶貴さんはとても身長が高いから目立つ。叶貴さんも同じピンクのハチマキをしているけど、叶貴さんとピンク色がどうにもかち合わない。
いつもしかめっ面と言うか、あまり明るい感情を表情に出さない性格だからか、明るい色は似合わないような気がする。
明るい色はやっぱり天磨さんかな。落ち着いた色が和遥さんで、響也さんは可愛い色も格好いい色も似合いそう。……叶貴さんは暗い色しか思い付かない。
あ、こんなこと失礼だよね。でも…やっぱり叶貴さんにピンクのハチマキは違和感があって、少し面白い。
「……ハクちゃん、何考えてるの~??」
「へっ!?」
「何か楽しそうに笑ってるから気になるじゃん。なになに~?」
「え、いや、あの…」
「無意識だったんだねぇ。めっちゃ可愛いんだけど、他の人に見せたくないから今はそんな顔しないで~」
「……??」
「あ、その顔もダメ~」
響也さんの言っている意味が分からなくて首を傾げると、大きな手のひらに目を塞がれて視界が暗くなった。
「ハクちゃん、ずっと下向いてて~。手、引っ張ってあげるからさぁ」
よく分からないけど響也さんの言うことに従った。隣から小さく舌打ちが落とされ、心が冷えていくのを止められなかった。
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