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城戸和遥side
体育祭がいよいよ始まると言うとき、突然、玖珂白桜さんが倒れた。
「ハクちゃん!?」と、響也くんの叫び声が聞こえたと思ったら地面にしゃがみこんでいる玖珂白桜さんと玖珂白桜さんを支えていた響也くんがいて。
自分はすぐに2人の元に駆け付けた。保健委員の自分は同じように駆け付けてくれた保健の先生と共に玖珂白桜さんの状態を見る。
頭を抱えるようにして、ぎゅっと目を強く瞑っていた。話しかけても反応がなくて優しく触れた肩は小刻みに震えている。
「何があったのか分からないけど、とりあえず救護のテントまで運びましょう」
先生がそう言ってすぐに、ふわりと玖珂白桜さんの身体が持ち上がる。見上げれば、響也くんがお姫様抱っこをしていた。
救護のテントへと先生と一緒に向かった響也くんの背中を呆然と見ながら、自分も遅れて立ち上がり、その後ろを追う。
自分にも、響也くんみたいにすぐに玖珂白桜さんを運べる勇気と力が欲しい。何だか男として情けないな、と1人落ち込んだ。
玖珂白桜さんが倒れたことによって、開会式は一度騒然として止まってしまった。しかし、テントに運ばれると仕切り直される。
救護テントの近くに並んでいる生徒たちは覗こうとして全く開会式に集中していなかったくらい、玖珂白桜さんが倒れたことは衝撃だった。
保健委員の生徒が何人か駆け付けてくれたけど、ただ気を失っているだけだからと先生に返された。
響也くんはとても心配そうに玖珂白桜さんを見つめていたけれど、先生にあなたも開会式に戻りなさいと言われ、渋々それに従った。
自分はどうしましょうか、と先生に聞くと玖珂白桜さんの傍で一応見ていて欲しいと願ったり叶ったりのお願いをされて。
保健室に必要な物を取りに行った先生がいなくなった後、自分は青白い玖珂白桜さんの顔を見つめた。
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