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開会式は順調に進んでいるようで、やたら長くて生徒からは不評の来賓挨拶の最中だった。
救護用のテントにはベッドが4つ置かれている。薄いタオルを玖珂白桜さんの身体に被せた後、ベッドの側にあるパイプ椅子に腰かけた。
「ん…」
すると玖珂白桜さんの瞼が揺れて、ゆっくりと持ち上がり、グレーの綺麗な瞳が現れる。自分は玖珂白桜さんを驚かさないように、小声で話しかけた。
「は、白桜さん……わわ分かりますか…?城戸和遥です…っ」
「……あ、ぇと…私…」
「かっ開会式が始まる時、たた、倒れたんです」
「…すみません、ご迷惑をお掛けして。もう、大丈夫です。ありがとうございました」
「め、迷惑なんかじゃななっ、ないですよ…っ!!でもよかったです。ままっまだ、横になっていて下さい。きゅ、救護の先生が来たら…いい、一応検診するのでっ…」
「分かりました…ありがとうございます。あの…ここまではどなたが…??」
「…あ、ひひ響也くん、ですっ。とてもし、心配してましたよ…っ」
「そうですか…本当にすみませんでした」
「いえっ…!!あ、あのっ…何か必要な物とか、あありますか??お水とか…」
「特には…ありがとうございます」
ニコッと微笑んだ玖珂白桜さんの表情は、いつもと変わらないように見えるけど何か違和感を感じた。
なんと言うか…いつもの玖珂白桜さんらしい優しい雰囲気じゃない。どこか、やんわりと拒絶されてるような感じがどうしても拭えない。
いつもと違う玖珂白桜さんにどうしたらいいか分からなくなっていた時、タイミング良く救護の先生がテントへと戻ってきてくれた。
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