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救護の先生は体温計と水で濡らしたタオルを手に戻ってくると、玖珂白桜さんに体温計を渡して測るように言った。 他にも痛いところはないか、気分はどうか、朝食はきちんと食べたかなど質問していく。特に問題ないですと答えた玖珂白桜さんの顔は、まだ晴れない。 先生もそれを分かっているから、疑い深く何度も質問をしていた。それでも大丈夫ですと言い張る玖珂白桜さん。 ピピピッと体温計が鳴って見てみると、35.4度ととても低かった。 「あら、玖珂さんは元々低体温??」 「はい」 「それにしても低すぎるわね。しっかりご飯も食べてお風呂で温まったり、なるべく温かいものを食べて体温を上げる努力をしてみて」 「…はい、ありがとうございます」 「今から競技は出られそう??無理はダメよ」 「それは全然大丈夫ですっ。とても楽しみにしていたので、自分の決まっている競技はきちんと出ます」 「分かったわ。もう少しで開会式は終わると思うから、それまでここで休んでなさい。城戸くん、側についていてあげてね」 「は、はははいっ」 暑かったら使って、と濡らしたタオルを玖珂白桜さんに渡してテントを出ていった先生。途端、沈黙が自分達2人を包む。 何か言わなきゃ、と思っても玖珂白桜さんから感じる違和感に勝手に緊張してしまって言葉が思い付かない。こんなとき、響也くんだったら違うんだろうなと考えてしまうことも嫌だった。 「…」 「……」 玖珂白桜さんは先生から渡されたタオルをギュッと握りしめたまま、視線を一点に集中させて唇をきつく引き結んでいる。 虚ろな眼差しと久しぶりに見る無表情が以前の玖珂白桜さんに戻ってしまったように見えて、心が落ち着かない。 どうしてもそんな表情は見ていたくなくて、気付いたら玖珂白桜さんのタオルを持つ手を両手で包み込んでいた。 .
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