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いきなり触れてしまったからビックリしたのか、玖珂白桜さんはビクッと肩を跳ねさせて身体を強張らせた。 「す…すみませんっ…!!ここ、怖がらせたかったわけじゃなくて、えとっ…は、白桜さんには、わ、わら、笑ってほしくて…っ」 「……」 「そっ、そんな顔…しし、しないで下さいっ…白桜さんには、ええ笑顔が似合いますから…!!」 「……」 小さくてスベスベの手を握り締めながら、今の気持ちを精一杯伝える。触れている手があまりにも冷たくて、握り締める手にさらに力を込めた。 すると徐々に玖珂白桜さんの手が温まっていくような気がする。その事にホッとして、少しだけ力を弱めた。 「…和遥さん」 「あ、えっえとっ…」 「ありがとう、ございます…」 「いいいえっ、自分は全然…っ」 全然何もしてない、と言おうとした言葉を、玖珂白桜さんの顔を見てのみ込んだ。 今にも泣きそうな、泣くのを必死に堪えているような、泣くのを我慢するために微笑んでいるような、そんな表情をされたら。 いくら女の子に免疫がない自分でも―――――抱き締めたくなる。 「……っ」 「か、和遥さん…?」 初めて、女の子を抱き締めた。 柔らかくて、とてもいい匂いがして、細くて、小さくて、儚い。 救護のテントはベッドの周りに柵が立っていて、外から中は見えなくなっている。だから自分はこんな行動に出れた。もし柵がなかったり、人が見ていたら絶対に出来なかったことだ。 「あなたの悲しむ姿は…見たくない」 ぽろり。落ちるように吐き出された自分の言葉。 家族以外の人には誰に対しても吃ってしまうのに、今だけは落ち着いて言葉が出てきた。声も、いつもより低かったかもしれない。 それだけ、自分の中で玖珂白桜さんの存在は大きいんだと、今更ながら実感した。 .
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