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音を立てないようにドアのぶを回してゆっくりと押す。空き巣に入る泥棒になった気分だ。 しかしいくら押してもドアは開かない。どうやら鍵がかかっているらしい。 校長室に入って鍵をかけているなんて、一体中で何をやっているんだ。校長はまだ体育館にいたはずだし、どう考えてもおかしい。 11月なんて中途半端な時期に転校してきて、一言も喋らず人を近寄らせない。それだけでも好奇心から注目された玖珂白桜。 どう見ても外国人の血が混じっているはずなのに、名前はきちんと日本人。謎が多くミステリアスな彼女が俺は気にくわない。ただ、気にくわない。 そんな気にくわない玖珂白桜の新たな謎が増えてしまった今、俺のイライラもさらに増えた。 いつも集会が終わった後、教室は全クラス開いている。教師が直前に開けるらしい。そして俺たちが戻ると決まって玖珂白桜は自分の席にいる。 誰よりも早く教室の中に入っている。もし今日もそうなら、この校長室から早めに出てくるはずだ。もうすぐ1時限目が終わるから。 俺は校長室の隣にある生徒指導室の中に入った。校長室は鍵がかかってるのに隣は開いているなんてやっぱりおかしい。 どっかの探偵気取りで生徒指導室のドアの前に立ち、隣の校長室のドアの開く音がいつ聞こえてきてもいいように、耳を澄ました。 5分ほど経ったとき、微かにドアの開く音が聞こえてきた。俺もゆっくりと生徒指導室のドアを開ける。微かな隙間から目だけ覗かせて廊下を見てみると。 プラチナブロンドの綺麗な髪が、教室の方へと向かっていくのが見えた。 俺も生徒指導室から出て彼女の後ろを追おうとして足を踏み出そうとしたが、彼女だけではないことに気付いて一瞬、立ち止まる。 どんどん遠ざかっていく2人。その後ろ姿を見ただけで、彼女の隣に並ぶ人物が誰なのか、分かった。 .
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