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そんな私の気持ちなんて知るはずがない響也さんは、私の頭を胸に押し付けたまま離そうとしてくれない。手で胸を押して離してほしいことを伝えても、力が緩むことはなかった。
「……」
「なにどうしたの~?もう用件は終わったよねぇ。すぐ行くからトッキーは先に行っててよ~」
「…チッ」
大きな舌打ちの音を残して、叶貴さんが去る気配を感じた。この緊迫した空気がなくなったことに安堵のため息を溢す。
私の頭を固定していた響也さんの手が緩んで、ちょっと出来た隙間から顔を上げる。途端、再び降ってきたキスの雨に逃げようとしたけれど私の力では敵うはずがなかった。
「ふぁ、っ…だ、め…」
「もうちょっと」
「響也さっ…んん…っ…」
「…はぁ。充電完了」
「充電……??」
「こっちの話だから気にしないで~。じゃ、オレはいってくるねぇ。ハクちゃんにカッコいいところ見せたいから頑張るけど、体調が悪そうなら休んでていいからねぇ」
ねっとりと絡んだキスにようやく満足したような表情を見せた響也さんは、ヒラヒラと手を振って喧騒の中へと戻って行った。
「…」
響也さんと触れ合っていた唇がとても熱い。熱情を含んだ眼差しを思い出して、1人赤くなっていた。
……頭を響也さんの胸に押し付けられていた時、響也さんの鼓動…すごく速かったな。目を閉じればその音がすぐ耳元で鳴っているよう。
「…叶貴さん、怒ってた、よね……」
考えなければいいものを考えてしまい、響也さんとの熱が一気に冷えていく。次に会ったとき、どんな顔をして会えばいいんだろう。
また、あの冷たい瞳で睨まれると思うと会いたくない気持ちも出てきてしまう。叶貴さんの瞳は、私の中で特に怖いものになっていた。
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