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南城叶貴side ―――――イライラする。 開会式が終わった直後、響也は救護のテントへと一目散に向かった。競技が始まって2番目に響也が出る100m走があるって言うのに、あいつの頭の中は玖珂白桜のことで一杯らしい。 和遥は保健委員長だから開会式が終わる直前まで救護のテントの中にいたらしい。開会式が終わった後、何故か真っ青な顔をして響也に少し遅れて救護のテントへ向かう背中が見えた。 天磨は玖珂白桜が倒れたことを心配しながらも、響也と同じく100m走に出るため入場門に並びに行った。こういうところは響也より賢い。 俺はまだ時間があるため自分の持ち場に戻ろうと思ったが、救護のテントの前をたまたま通りかかった時。 響也の後を追った和遥が、中に入ろうとせずにその場で固まっていたのを見つけた。 「…和遥?どうしたんだ、中に入らねーのか??」 「とっ、とと叶貴くんっ!!!うう、うんっ、は…白桜さん、ねね寝てるみたい、だから…っ。ささ、さっき、開会式にも、戻る前に…す、皇先生が来てたからっ…し、し心配だったんだけど……」 「皇……??」 「でっ、でも…!!いい今は、は、は、入らない方がいい、かも…っ」 「ふーん。っておい!!和遥!!」 いつもの吃りより明らかに不自然な動揺をしていた和遥は言いたいことだけ言って逃げるようにどこかへと走って行った。 途中で派手に転けてたけど、物凄い早さで起き上がり、すぐにその猫背は見えなくなってしまった。 和遥があれだけ動揺することが、この救護のテントの中で行われていることは目に見えている。はぁ、と大きなため息を吐きながらテントの中に入ったら。 あの状況だった、ってわけだ。 .
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