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別に、響也と玖珂白桜がキスしていたことにイライラしてるんじゃない……多分。いや、絶対そうだ。
体育祭中に、あんな誰が来るかも分からない場所でキスしてるなんて、普通あり得ないだろ。しかもこっちはわざわざ呼びに来てやったって言うのに。
響也の野郎、俺が邪魔で邪魔で仕方がないって顔してたな。あーマジイラつく。人の親切心を何だと思ってんだ。
身体のどこかが焼けるような苛立たしさを隠すこともせずに、自分の持ち場へと戻る。何の委員会にも入ってない奴らはクラスごとにまとまっている。
俺がその中に入ると俺の苛立ちを感じたんだろう、1人、また1人とこの場を去って行った。
最初の種目であった1年の100m走が終わり、次の種目である響也と天磨が出る3年の100m走に出場する生徒たちが入場してきた。
その中にはピンクのハチマキを付けた響也と紫色のハチマキを付けた天磨の姿もしっかりある。なるべく響也の方は見ないように意識しながら適当にグラウンドを見ていた。
響也も天磨も背が高い方だから必然と順番は後ろになる。先に始まる女子の列が半分ほど終わったところで、周りの空気ががらりと変わった。
まさか、と思い後ろを振り返れば案の定、救護のテントから出てきたらしい玖珂白桜がビクビクしながら立っている。
自分の持ち場がここだと分かってはいるんだろうが、普段、全くと言っていいほど1人で行動しない玖珂白桜が1人でいるもんだから、四方八方から視線を注がれている。
お前話かけろよ、やだよお前が行けよ、みたいなやり取りがそこら中でやられているのは火を見るより明らかだった。
いつも玖珂白桜を見つけるとうるさい女子生徒共は半分ほどが100m、もう半分はそれぞれの委員会の持ち場にいるらしく、近くには見当たらない。
クラスで話せる奴がいないせいか、玖珂白桜は俺と目が合ってもさらに目をキョロキョロさせて困ったように眉を垂らしていた。
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