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あれは……担任の、皇彩人。 言葉を交わすわけでもなく、ただ無言で並びながら歩く2人の後ろを俺も自然に追いかけた。 校長室で何をやっていたんだろうか。いや、担任なんだから皇なら玖珂白桜と話すことはあると思う。 でもそうだとしたら、皇は彼女の声を聞いたことがあるってことだ。こうやって、誰も見ていないときに。 何故だ。何故また俺がイライラしなくちゃいけないんだ。いくら彼女が誰とも喋らないと言っても担任とは話さなければいけないときもある。 それだけだ。きっと、それだけなんだ。だから俺が気にすることなんてない。 そう思いながらも2人は階段を上り、俺も見つからないように後を追う。何だかストーカーみたいだな。いや、違う断じて違う。 自分の中にある何かと葛藤しながら向かっている場所はやっぱり教室だと分かった。皇が1組から順に鍵を開けていく。 その度に隣の玖珂白桜も立ち止まり、皇を待つ。そして最後の8組のドアを開け終えて、玖珂白桜は教室の中に入った。 皇はこのまま戻るのだろうと思っていた、が。何故か皇も中に入る。ドアは開いたままだった。 俺はドアの壁にベッタリと背中を張り付け、中を恐る恐る見てみると。予想もしていなかった光景に、鈍器で頭を殴られたかのような衝撃を受けた。 「白桜……」 「んぅ…っ…」 どういう、ことだ。 一体、何が起きているんだ。 玖珂白桜の席、座ろうとしていた彼女を皇が無理矢理机の上に押し倒し、キスをしているように見える。 電気は着いていないしカーテンも閉まってるから暗くてはっきり見えないが、たぶんキスをしている。それも、深いやつ。 「ふぁっ…だ、め……」 ドクンッ 心臓の音が異様にうるさい。耳のすぐ横に心臓があるかのように、うるさい。その原因は。 担任が生徒を押し倒している禁断の現場を見てしまったせいなのか。突然のことでパニックになっているからか。それとも。 初めて聞いた玖珂白桜の声が……とても甘い喘ぎ声だったから、なのか。 .
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