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その直感は見事に的中してしまい、玖珂白桜は震えすぎて立っていることも出来なくなったのか、崩れるように倒れそうになった。
咄嗟に足を一歩踏み出し右手で支えたが、触れた体温の低さと尋常じゃない震えにぞわり、と鳥肌がたった。
…何なんだ、こいつ。何が原因でこんなふうになっちまうんだ。
今にも目の前から消えてしまいそうな雰囲気に俺は玖珂白桜を肩に担いだ。体育祭の中で人の視線が多いのに、姫抱きなんてこっ恥ずかしいことは出来ない。これが限界だと思った。
次々に増えていく視線を一瞥し、とりあえず救護のテントの方へ向かおうと動かした足は。
「…ハクちゃん!?」
こいつによって、強制的に止められた。
「え、ちょっ、トッキー!?ハクちゃんどうしたの!?」
「うっせーよ。なんか知んねーけど、いきなり倒れただけだ」
「倒れた“だけだ”!?何その軽い言い方!!開会式の時にも倒れているのに…っ、何か病気かもしんないじゃん!!!」
「だから今こうして運んでやってんだろ。つかうぜぇ、叫ぶな」
「トッキーになんか任せられない!!ハクちゃんはオレが運ぶからハクちゃん返して」
「はぁ?返して、って別にこいつはおまえのもんじゃねーだろ。つか、もう救護のテントすぐそこなんだから意味ねぇし」
「ハクちゃんに男が触れてんのが嫌なんだってば。そのくらい察してくんないかな。それにいずれ、近い内にハクちゃんはオレのものになるんだからね」
「もうお前黙れ。天磨よりうぜぇ」
イライラが止まらない。むしゃくしゃする。
響也と言い争いながら再び救護のテントへ入り、俺は不機嫌120%の表情で、救護の教師から状況説明を強いられた。
その間、響也はベッドに寝かした玖珂白桜の手をずっと握り締め、今にも泣き出しそうな顔で見つめていた。その光景に、さらにイライラが増した。
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