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結局、玖珂白桜はその後の体育祭は不参加となった。
またあれからすぐに目を覚ました玖珂白桜だったが、毒液でも注射されたような青白い顔で大丈夫ですと言われても誰も信じやしない。
出させて下さいお願いします、と粘りに粘った玖珂白桜だが救護の教師にも響也からも、聞き付けた天磨と和遥からも首を横に振られては渋々引き下がるしかなかった。
すぐに家に帰ることを教師は進めたが、それには響也が一番に反応を示した。何と言っても、玖珂白桜は響也の家に居候している。
父親は単身赴任、母親は今日も仕事だから家に玖珂白桜1人を残しておくわけにもいかない。かと言って、響也まで体育祭に参加せずに一緒に帰るなど、認めてもらるわけがない。
玖珂白桜が響也の家に住んでいることは、あの玖珂家の人間と俺達以外は知らない。何も知らない教師はお家に電話いれないと、その前に皇先生に、なんて言い始めた。
「ねぇ、先生~。ハクちゃんの家は両親が共働きでとても忙しい人達だから連絡がつかないと思うんだよねぇ。それに、誰もいない家に返しても体調はよくならないでしょ~」
「あらそうなの?玖珂さん、1人では確かに心配ね」
「だからさぁ、体育祭が終わるまでハクちゃん、保健室で休ませてた方がいいと思うんだよね~。オレの家とハクちゃんの家は近いし、体育祭が終わったら送っていくからさぁ」
「うーん……そうねぇ…一応体育祭の間、生徒は校舎に立ち入り禁止なんだけど今回は特例ね。特に熱とかあるわけでもないし、顔色がよくなるまで保健室で寝てるといいわ」
響也の言葉に促されて、教師はあっさりと許可を出した。保健室のドアを外から鍵をかけておくという条件で、玖珂白桜は響也に抱えられて保健室へと連れていかれた。
俺はただそんな響也の背中を見送ることしか出来ずに、自分の競技のために重い足を動かさざるをえなかった。
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