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「ハクちゃん大丈、……」 カーテンを開けた先に待っていたのは、ベッドに横たわる2つの身体。1人はベッドに肩肘を付け、その手に頭を乗せながらもう1人の身体を掛け布団の上から抱え込むようにしている。 抱え込まれている身体はウサギのように身体を小さく丸めて、もう1人の胸に縋るようにして小さな寝息を立てていた。オレが結んであげたポニーテールは解かれ、白金の髪をシーツの上に散らせながら。 これだけでもオレの心臓は止まりそうだと言うのに、さらに追い討ちをかけるようにしてよくよく2人の身体を見てみると信じられない光景に目眩がした。 ――――裸、なのだ。 「……っ」 「君は…確か、この子と同じクラスの五十嵐響也くんだね。天使を迎えに来てくれたところ悪いんだけど、今は寝かしてあげてほしいんだ。ようやく今、落ち着いたところだから」 そう口許のホクロを横に引き延ばす穏やかな声音に、流されそうになる。独特な雰囲気、しかし剣呑な空気にはならない彼はオレの記憶が間違いなければ、この学校の校長という役職に就く男。 仮にも教師と生徒と言う危うい関係にあるはずなのに、この余裕はどこから来るのか。簡単だ、切っても切れない“親戚”と言うカテゴリーに入っているからだ。 「もう少ししたらこの子を君の家まで私が責任を持って送っていくよ。だから君は先に帰ってなさい」 下手したら、自分の父親と同じくらいの歳の男のはずなのに、それを全く感じさせない色気。大人の男と言う言葉が悔しいほどにぴったりと嵌まる。 こちらに背を向けているオレの大切な少女の肩が掛けられている布団から剥き出しになっている。もちろん素肌で、着ていたはずの体操着は枕元に綺麗に畳んであった。 とても綺麗なベッド。しかし、どう考えてもこのベッドの上で2人が交わっていたことを拭えないほどに、甘い空間が出来上がっていた。 .
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