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玖珂白桜side 随分長く眠った感覚があり、身体全体が心地よく痺れている。寝起きで意識と肉体が上手につながっていないので、身体が思うように動かない。 久しぶりに感じる腰と下腹部の重みに眠る前までのことがまざまざとフラッシュバックしてきて、ハッと瞼を上に持ち上げた。目の前に広がっていたのは、逞しい裸。それが誰なのかなんて、聞くまでもない。 「…やぁ、天使。起きたかい?」 「槙志、さん……」 鼓膜に直接届く温かみのある声。その声は、私を安心させる一番の特効薬だった。 「身体は辛いだろう。少し無理させてしまったね」 「…っ、いぇ…」 「……頬がピンク色になった。可愛いね、私の天使」 「んっ」 繋がっていた時のことを思い出して、恥ずかしさから視線を槙志さんから白いシーツの上に外す。それもすぐに槙志さんに顎を掬い取られて、キスが落とされた。 温かく、じんわりと熱が広がっていくようなキスに、大人しく委ねる。槙志さんの体温と匂いに包まれて、幸福感で胸が満たされる。 「はぁ…っ…んん、」 「おっと、少し苦しかったかな??まだ脳に酸素が行き届いていない時なのに悪かったね。天使があまりにも可愛くて、つい」 「ま、槙志さん…っ」 私のことを惜しみなく“可愛い”と言ってくれる槙志さんの言葉がくすぐったくて、それ以上は言わないでという意思を込めて槙志さんの口元を両手で塞ぐ。 きっと真っ赤になっているであろう顔が燃えるように熱くて、枕にぽすんっと顔を埋めた。頭上で、くすくすと笑い声がしてさらに恥ずかしくなる。 そんな私の手をぎゅっと握りしめ、指と指を絡めた槙志さんが私の背中を優しい手つきで撫でた。直に触れられているところから槙志さんの熱が伝わり、もっと触れてほしくて縋るように私も手を握り返す。 すると嬉しそうに微笑んでいる槙志さんが、見なくても容易に想像出来た。 .
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