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響也さんの家に着いてすぐに、槙志さんは名残惜しさを微塵も感じさせずに爽快と去っていった。こんなことで寂しさを感じている自分に渇を入れて、玄関のインターホンを鳴らした。 確か学校を出たのが18時過ぎだから、今はそれから30分くらい経っている。もしかしたらもう響也さんのお母さんも帰ってきているかもしれない。 どんな顔で響也さんと会えばいいんだろう、とこれからのことに不安を感じていた時、ガチャと扉が開いた。 「あ…っ」 一言目はごめんなさいと言おうとしていた言葉は、口を開いて相手を見ようとしたけれど瞬時にのみ込む。玄関を開けたのは、言おうとしていた相手ではなかった。 「……え」 「…」 「何で玖珂白桜!?」 相手も私を見るなり固まったと思ったら、突如大声で私の名前を叫んだ。びくり、と心臓が跳ね上がる。 「え、マジでどうしてここにいんの!?うわ、ちょーお人形じゃん!!なにその肌!!ぷるぷるってかふわふわ!?鬼うらやま~!!!」 お、鬼……? 今では私の帰る場所となった響也さんの家から出てきたのは、派手な金髪を盛大に巻いて、バッチリ化粧をした、ちょっと色黒の女の子。背は私よりずっと高く、見上げないといけない。 ちょっとハスキーな声で若者らしい喋り方、タンクトップには溢れんばかりのバストがキツそうにおさまっていて、デニムのショートパンツをカッコよく着こなしている。 目の回りが真っ黒なのはメイクなんだろうか。睫毛がバサバサと何枚も重なっているように見える。キツい香水の匂いも漂ってきた。 「ガチで何でここにいるわけー!?つーか今日の体育祭、朝しかいなかったじゃん??うちのクラスの男共ごり泣きしてたわー」 この言葉を聞く限り、どうやらこの女の子は同じ高校の生徒らしい。クラス数が多いし、人間恐怖症の私には知らない人もたくさんいるから、この人を知らなくても何らおかしくはない。 .
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