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久しぶりに入った響也さんの部屋は、彼らしくサッカーのスポーツ雑誌や漫画、DVDなどで棚は埋め尽くされている。淡いグリーンのカーテンが彼の雰囲気にピッタリだった。
私は1階にある響也さんのお母さんの部屋のすぐ隣にある空き部屋を使わせてもらっている。響也さんのお母さんが「あの子も男だから絶対2人きりで響也の部屋に入っちゃダメよ」と言う言葉を守ってきた。
でも今日だけは、守れそうにもない。響也さんの有無を言わせない雰囲気が彼の怒りを強く際立たせている。胃がキリキリする思いで、指定された場所に座った。
「…何か飲む?」
「いえっ…私は大丈夫です」
「そう。なら早速話しよっか」
「……はい」
折り畳み式のテーブルを挟んでクッションの上に向かい合って座る。私は正座で、叱られる前の子供のように首を縮めていた。
「まず、どこに帰ろうとしてたのか教えて」
「……特に考えてませんでした」
「つまり、突発的に帰るなんて言ったの?」
「は、い…」
「何でそんなこと」
「響也さんとありささんの邪魔をしたら悪いと思って……」
「はぁ?アリサ??」
ぐっと眉間に力を入れた響也さんは、私が無意識に肩を揺らしたのを見て、すぐに口許だけで笑う。笑っていないであろう目を直視する勇気など、今の私にはない。
「えっと、あの、響也さんとありささんが付き合ってると思って…私がいたら、お邪魔かなと…」
「はぁあ!?オレとアリサが付き合ってる!?え、ちょ、待ってよハクちゃん……オレ、何度も言ったよね…??」
「……?」
「…オレはハクちゃんが好きだって言ったよね!?恋愛の好きだって分かってたはずだよね!?それなのに何でそんな発想になんの!?マジ信じらんない……」
「あ…」
「何その顔。まさか今思い出しましたとか言わないよね?」
「……」
部屋の温度が一気に3度くらい下がったような、一気に秋から真冬に変わったような、実際にそれだけならまだよかったのかもしれない。
彼の怒りは本物だ。普段笑顔の人が怒るととても怖いと言うのは、都市伝説だけではなかった。
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