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響也さんの問いに頷かずに黙り込んでしまったのをしっかり肯定とみなされてしまい、反論も言い訳も出来ずに落とすしかなかった視線。
机を挟んで真っ正面に座っていたはずの影が動く気配を感じ、反射的に顔を上げれば、すぐ真横に響也さんの身体があり、思わず背を後ろに傾けた。
咄嗟に逃げなければと危険信号が頭の中で出されたが、それに反応するよりも早く響也さんの腕が私を軽々と持ち上げる。そのまま、ベッドの上に落とされた。
「そんなにオレの気持ちは伝わってなかったの…?それとも信じてないの…??」
「…っ」
「オレはこんなにハクちゃんのことで頭がいっぱいで、同じ屋根の下にハクちゃんが寝てると思うとドキドキして、毎日がすごく幸せなのに、毎日がすごく苦しい」
「…ひび、」
「オレがハクちゃんの言葉や行動に一喜一憂してることまでは伝わってなくて当然かもしれない。だけど、オレの気持ちが伝わってないのは……すごく、悲しいよ」
「……」
何とも言い表せないほどの悲痛で、悲しげな苦笑。歪んだ口許が震えていて、ベッドに押し付けられた手首を掴む指先が冷たい。
響也さんの表情、体温、言葉が、私がどれだけ彼を傷付けてしまったかを物語っていた。
「……言葉で伝わってなかったなら…行動で伝えるしかない、よね」
悲しい表情が一転、化石のように乾いた表情が浮かび上がり、響也さんの感情が読み取れなくなったと思ったらゆっくり下りてきた綺麗な顔。触れた唇。
一度離した後、再び塞がれた時には息も吸い尽くすような、深く重く長い、そんな口吻だった。
がぶりと唇を覆われて、食べ尽くすように何度も何度も唇を吸われる。蠢く舌が熱く、頭の芯までとろとろに溶かされそうだった。
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