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もう何度されて、返したか分からない頬へのキス。溢れて止まらない涙を何とか我慢しながら、私もディオンの両頬にキスをした。 久しぶりの抱擁と挨拶のキスに胸が熱くなるのを感じながら、ディオンと見つめ合っていたとき。「ゴホンッ」と咳払いが近くで聞こえて、一瞬で現実へと引き戻された。 「えーと、そろそろいいかな??1限目が始まってしまう前にHRを終わらせないといけないからね」 にこやかな笑みを浮かべながら席につくよう促され、ディオンは「また後で」ともう一度私の頬にキスを落としてから、自分の席となる場所へ向かっていった。 今さらになってようやく状況を飲み込んだ私は、こんな人前で泣いてしまった恥ずかしさで顔を隠し、静かに椅子に腰を下ろした。四方八方から視線を感じてしまうのを無理に気のせいだと思い込む。 そして彩人さんの声によりHRは簡単に終わった。彩人さんが教室を出るのとすれ違いで1限目の教師が教室へと入ってきたので席を立つことも出来ぬまま、授業開始のチャイムと共に普段通りの授業が始まった。 チラッとディオンの席の方を見ると、ディオンも同じタイミングで私の方を見ていたらしく、バッチリと目が合った。すぐに目を細めて気恥ずかしそうに笑う彼の頬には笑窪が出来る。その笑窪がまた見れたことにも嬉しさを感じ、私も微笑み返した。 既に机の中に教科書やノートが用意されていたようで、ディオンはシャーペンを持ちながら真剣な眼差しで黒板を見詰めている。 だけど日本語が分からない彼には教師の言っていることも黒板に書かれていることも理解出来ていない。それが何だか可愛くて、後で日本語を少しずつ教えてあげようと心の中で決めた。 まさか、ディオンと同じ学校で同じ教室で授業を受ける日が来るなんて、思ってもみなかった。だってディオンは私の2つ歳上で……、あ、れ?? ――――どうして、2つ歳上のディオンが同じ教室にいるの??それだけじゃない。考えてみれば、彼はまだ牢獄の中にいる身のはずだ。私の記憶が正しければ、懲役20年くらいだったはず。 まだ2年しか経っていないのに、どうして……。 .
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