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一度考えてしまうと、ぐるぐると同じところを回るように深く考えてしまう癖がある私は、授業の話は右から左に聞き流し、気付いたら1限目終了のチャイムが響いていた。
教師が教室を出たところで、途端にざわりと騒がしくなった。何だろう、と思って顔を上げると目の前には人、人、人。もちろん知ってる顔の女友達ばかりだけれど、皆の目が興奮しているようで少し怖い。
「白桜ちゃん白桜ちゃん!!!彼とはどういう関係なの!?」
「ま、まさかっ、元彼とか!?」
「いいえ!!きっと遠距離恋愛をしていた今彼なのよ!!!そうでしょう!?」
「……でも、五十嵐くんと付き合ってるみたいな雰囲気じゃなかったですか??」
「英語で何を話してたのかそこんとこ詳しく!!!」
「はぁー……お人形さん、食べたいモフモフ」
一斉に詰め寄られて誰が何を話しているのか辛うじて聞き取れたものの、どれから答えていいのか分からなくておろおろしていると、「Hello?」と発音のいい声に皆が勢いよく振り返った。
「はっ!?間近で見ると直視出来ないほどにイケメンだわっ!!!」
「背高すぎません!?」
「あわわわっ、とても同い年には見えない……っ」
「ふふふ、お人形さんは私のもの」
キャーキャー言い始めた女の子たちに、ディオンも困ったような驚いたような顔で私を見る。女の子たちの間を一生懸命通りながら、私の前まで来るとさらに周りの声が騒がしくなった。
『ディオン……皆、あなたが何者かって気になるみたいよ』
『ハハハ、じゃあ何て答えっかな。俺はセラフィーナのボーイフ……、いや、兄貴みたいなものだ、が一番しっくり来るな』
『それよりディオン、いろいろ聞きたいことがありすぎて私の頭の中、パンクしそう。昼休み、きちんと話してくれるよね??』
『もちろん。話したいことがたくさんあるんだ。セラフィーナのことも聞きたいし、昼休みは一緒に過ごそうな』
『ええ』
そう英語でやり取りした後、2限目の教師が入ってきてバラバラと生徒たちは自分の席に着いた。ふと、鋭い視線を感じてそちらに目を向けて、冷や汗が背中を伝った。
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