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こんなことをする人が誰なのかは、まだ断定することは出来ないけれど、何となく予想できる。でも、何のためにこんなことをしたのかが分からない。
それに、あの日の事件に私が関わっていることは知らないはずだ。私はあの日のことを誰にも話せなかったし、話すことなんて出来なかったから。
ディオンが逮捕されたことも、ロイスが死んだことも、世間には公にされていない。あの日の事件はテロリストによる犯行として表向きには発表されていた。一般人が、むしろ日本人が知ることなんて出来やしない。
『それから俺は与えられた家でひたすら大量の雑誌と向き合った。日本中の高校を片っ端から見て、セラフィーナの制服と同じ高校をやっと見つけたことが出来たのは、ついこの前の11月に入ったばかりの頃だったんだ』
『…ご飯はきちんと食べてた?』
『ぶはっ!!何でその質問が出てくんだよ。ホント、セラフィーナはおもしれーな。もちろん食ってたよ。今の俺をみりゃ、分かんだろ?』
『あ、それもそうね。調べることに夢中でご飯のことを忘れていたらどうしようかと思ったわ』
ディオンは目の前のことに一度集中すると中々抜け出せなくなる癖があるのを覚えていた。クスクスと肩を揺らして笑う私に、ディオンの双眸が柔らかに細くなる。
『まーあながち間違いじゃねぇけどな。早く見つけたかったし。でも腹は空くからよ、空いたらきちんと作って食ってたぜ。で、見つけたときなんてホント嬉しかった』
『日本全国にはたくさん高校があるのにその中からよく見つけられたね。でも見つけてそれからどうしたの??』
『見つけた瞬間にさ、ポストに何か落ちる音がしたんだ。玄関に行ってみたら白い手紙が落ちてた。あの時と同じような封筒だったからまさか、と思って中身を見てみたらよ、日本行きへの航空チケットと……セラフィーナの高校への入学許可証が入ってた』
『え…?』
そんなことを出来る人はあの人しかいない。だけど何でこんなことを。それにディオンは2つ年上なんだから、高校生にはなれないはずなのに。
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