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そんな疑問が顔に出ていたらしい私に、ディオンは真面目な顔で続きを話す。
『セラフィーナ、何で2つ歳上の俺が高校に入学できたか疑問だろ?俺も最初は入学許可証を見たとき、ふざけんなって思った。もう一度高校生、しかも日本語すら分かんねぇのに無理だろって』
『…うん』
『で、手紙の方を見てみたら納得した。俺は2年前の今日までは確かに高校3年だった。だけど卒業はしていない。出来るはずもなかった。俺の高校生活は2年前の今日で止まっている。だから、残りの単位を取れる資格があるって書いてあったんだ』
確かにそうだ。ディオンは、ディオンだけではなくあの日、あの高校にいた生徒は誰一人卒業が出来ていない。それはほとんどの生徒が亡くなったから。
生き残ったディオンのような生徒は皆、普通の高校に転入することも叶わない状態となってしまった。
『とりあえず俺は日本に行くことだけを考えて、ここまでやってきた。どこのどいつだかは知らねぇが、ここまでやってくれんなら貰えるもんは貰っとかねぇとな』
『いつ日本に来たの??』
『先週の金曜日だ。航空チケットの日付がそう指定されてたからな。んで、羽田空港に着いたら黒いスーツ着た男に英語で挨拶された。俺を待ってたって』
『……その人、どんな人だった?』
『んー身長は俺より全然低くて、眼鏡かけてたな。なんか、すんげー目付きが悪くて冷たさを感じた。歳は俺と同じくらいかもう少し上くらいに見えたけど』
『…そう』
今のディオンの証言から思い当たる人物は1人しかいない。つまり、今回の一連の出来事は玖珂家の人たち全員が動いているということなのだろうか。
でも、どうして……??私は引き取られた時だって何も言わなかったし、玖珂家の人も誰も何も言うことはなかった。
私が眠れない夜に泣いていても、その理由を問い質すこともなくただ温もりを与えながら傍に居てくれた。
まさか、最初から、全てを知っていたの……?
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