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不器用で、言葉がいつも足りなくて、誤解されやすいディオンだけど、本当は誰よりも優しいことを知っていたのに。
自分のとった行動に後悔はしてないけど、きっとずっと自分自身のことを責めていたんだ。もっと他に方法があったのかもしれない、もっと他の結末があったかもしれない。
そう、たった1人であの暗く湿った場所でこの2年間頭を抱えて悶々と考えていたんだろう。
『…私、自分の事ばかりだった』
『なわけねぇだろ。お前は、俺の罪を一緒に抱えようとしてくれてたんだ。バカなくらいお人好しなのは今に始まったことじゃねぇし』
『むぅ…バカってなによ』
『ははっ。それでいーんだよ、セラフィーナ。ありがとな、俺のために』
『……私の方こそありがとう。ディオンが今ここにいることが何よりも嬉しい』
『なっ……お、俺も…だよ』
『ん?何か言った?』
『な、んでもねぇから!!』
『ふふっ、変なディオン。何か心臓の音、早くなってない??』
『っ……!?』
私がそう言うとディオンは勢いよく私の肩を掴んで身体を離す。そうして見上げたディオンの顔はお風呂上がりのように真っ赤だった。
大きな身体で顔を赤くしているディオンが可愛くて、思わずくすくす笑ってしまうとディオンはプイッとそっぽを向いてしまう。
『ふふふっ、ごめんなさいディオン。あまりにも可愛くて』
『…………』
『…ディオン?』
何の反応も返されなかったことにそこまで怒らしてしまったかと焦りながらもう一度ディオンの顔を見上げる。すると、ディオンはある一点を睨むようにして見つめていた。
私もその視線の先を追って顔を動かす。ディオンが見つめているものが何なのか、その先にいた人物を見て、全身を硬直させた。
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