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響也さんのことは好きだ。本当に、とても好き。だけどその“好き”が響也さんの言う“好き”と同じかと聞かれれば、答えはノーだ。
私は今までに一度も恋愛と言うものをしたことがない。そもそも、考えたこともなかった。
でも私は心がとても弱いから、すぐに寂しくなって人肌を求めてしまう。イケナイことだと、オカシイことだと分かっていながら玖珂家の人達には日替わりで抱かれていたし、たまに響也さんから求められるキスにも抵抗しなかった。
「…」
「…ハクちゃん、何か言ってよ」
「……ごめん、なさい」
「それは何に対する謝罪?」
「本当に、ごめんなさい…」
「……」
謝ることしか出来ない自分が、情けなかった。私のこんな態度にきっと響也さんは私が想像も出来ないほどに傷付いている。
傷付いた響也さんの顔を見たくなくて、さらに強く響也さんの胸に押し付けた額。
「――…ハクちゃんはさ、誰にでもこんなことするの?何とも思ってない奴にもキスしたり、抱きついたり出来るの?温もりをくれるなら、誰だっていいんだ??」
「っ…!!」
違う、とすぐに言い返せなかったことが何よりもの証拠。図星だったのだ。
「……でもオレは絶対に別れないよ。ハクちゃんがオレを好きじゃなくてもオレはハクちゃんがめちゃくちゃ、壊れそうになるくらい、夜も眠れなくなるくらい、好きだから。ハクちゃんの人肌が恋しい気持ちを利用する」
ここでやっと抱き締め返してくれた腕にひどく安心してる自分が、さらに醜くて。どうして私はこんな人間なのだろうと自己嫌悪が止まらない。
好きになってくれる人を好きになれたら。与えてもらった分だけ、同じように与えられたら。そう出来ないのが、悔しい。自分の気持ちをスイッチ1つでコントロール出来ればいいのに。
「そして最後には必ずオレを好きにさせてみせるから。今はまだそうじゃなくても、必ず落とすから覚悟、しといてね」
ぎゅっと強まった引き締まった腕の感触に、無言で頷いた。彼に嫌われていない、その事実だけでいつの間にか身体の震えはおさまっていた。
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