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『……』
すぐ後ろでディオンの気配を感じ、説明しなければと響也さんに腕を解いてもらい、後ろを振り返った。2m以上もあるディオンを見上げると、何故か険しい表情をしている彼。
何か気に触るようなことを口走ってしまったか、考えてみても思い当たらない。とりあえず、響也さんの紹介を始めた。
『ディオン、彼は五十嵐響也さん。私の恋人よ。とっても優しくて素敵な人』
『……そ、か』
「どうも~。同じクラスだし、よろしくねぇ」
『同じクラスだからよろしくって言ってる』
『…こちらこそ、よろしく』
「こちらこそ、って言ってます」
「ありがと~」
響也さんの機嫌は直ったみたいだけど、今度はディオンの方が難しい顔をしている。口数も少ないし、あまり人見知りしないはずなのに珍しい。
そんなことを思いながら、ディオンの顔を凝視していると、響也さんの口から思いもよらぬ言葉が。
「って言うかハクちゃんさぁ、ハクちゃんってアメリカに住んでたの~?」
「……えっ」
「だってこの人と中学生の時から知ってるんでしょ~?」
「…言って、なかったでしたっけ…」
「うん聞いてない~」
それはもう、ニッコリと効果音がついてきそうなくらい、表面的な笑顔を向けられた。考えてみれば、私のことを響也さんに話したことってほとんどなかったかもしれない。
聞かれなかったからってこともあるけれど、恋人なのに出身まで言ってなかったとはあまりにも失礼のような気がする。
「すみません…っ。私、アメリカ生まれなんです。日本には5歳から8歳の時まで住んでて、その他はずっとアメリカでした」
「…たくさん聞きたいことあるからさぁ、今日家に帰ったら話してくれる~?」
「はいっもちろんです!!」
私の返事に満足したのか、今度は本来の心からの笑顔で頷いてくれた。
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