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五十嵐響也side
最近、トッキーの様子がおかしい。
朝の挨拶も無視され、名前を呼んでも反応が遅い。心ここにあらずって感じで常にぼーっとしている。
それだけじゃない。本人は気付いていないかもしれないけど、あんなに興味ないと言っていたハクちゃんのことを無意識に目で追っている。
そしてたまに、担任のスメラギのことをすごい目付きで睨んでいる。何かあったのと聞いても、別にの一点張り。
7月に入った今日、まだ梅雨は明けていない。梅雨の終わった後から夏本番の暑さがやってくるから、まだ梅雨明けはしてほしくないからいいけど。
自転車通学だからあまりに強い雨の日は自転車を漕ぐのが憂鬱になる。
「おっは~トッキー」
「……」
やっぱり今日も反応なし。本当にどうしたんだろう。人に言えないような悩み事でも抱えているのかな。
空返事のトッキーにオレはめげずに言葉を投げ掛ける。トッキーが好きな漫画の話や昨日のドラマの話、最新のゲームのこと。
でもどれを話しても視線は窓に向かっているのに、ただある1つの話題だけトッキーの視線が動く。
「ハクちゃんご到着~」
「……」
ほら、やっぱり。ハクちゃんが来たことを知らせればその視線は後方にいるフランス人形のような可愛い女の子に向けられる。
あんなに興味ないと言って見向きもしなかったのに、一体どんな心境の変化なんだろう。
そう思いながら、オレもしっかりハクちゃんの姿を目で追う。フラフラと足元が覚束ないハクちゃんに、内心心配しながら見つめる。
青白い顔なのに何であんなに可愛いんだろう、と疑問に思いながらも。机に頭を伏せたハクちゃんからトッキーに視線を移した。
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