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《PM12:47》
『……何、これ』
『嘘だろ…』
白桜とディオンは目の前の光景に唖然とした。その後ろ、ロイスは1人口角を歪ませて満足そうに微笑む。
ロイスが普段籠っている研究室から食堂へと向かう途中、棟と棟を結ぶ渡り廊下が崩れていたのだ。その向こうでは黒い煙や真っ赤な炎が見える。
『まさか、さっきの音って…』
『爆発した音ってことかよ……それにしたって、規模がでかすぎねぇか…??』
『テロだよ』
『え…』
『は?』
『どっからどう見てもテロじゃん。ほら、高等部のA棟なんて全部崩れてる』
『そんな…っ』
『……!!!』
ロイスの指差した方向に目を向けて、白桜は口許を手で覆い、絶句した。ディオンはあまりのショックに言葉を失う。自分のクラスメイトたちがいた場所。あの中に生き残っている者がいるとは到底思えぬほどに酷い有り様だった。
誰かの悲鳴が聞こえる。バチバチ、炎の音や柱が崩れる音、遠くからサイレンの音も近付いてくる。
こっそり、着ていた白衣のポケットの中に手を入れたロイス。ボタンを、3連打した。
――――ドォォォォン!!!!!!!
――――バゴォォン!!!!!!!
――――ボオォォォンッ!!!!!!!
『きゃっー!!!』
『セラフィーナッ』
突然の爆発音に白桜は耳を塞いでその場に勢いよくしゃがみこんだ。ディオンはすぐに白桜を抱き締めようとしたが、あまりのショックと衝撃に咄嗟に身体は動かない。
その隙に、爆発を起こした張本人は白桜の名前を叫びながら細い身体を腕の中へと収めた。声は切羽詰まっているように聞こえるが、表情は愉快そうに伸びている。
『何てことだ…高等部は全部やられたぞ……』
そんな演技もしっかりとこなし、消えていく命に嬉しさが込み上げる。恐怖からロイスの服をギュッと掴む白桜が愛おしくて堪らない。ロイスは、ニヤける顔を不安の演技の下に隠した。
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