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火はどんどん燃え広がる。横に、横に、津波のように押し寄せていく。爆発した時に飛んだ建物の破片やコンクリートが二次被害をもたらす。 『な、なんで…こんな…』 『ありえねぇー…ありえねぇよッ!!!』 『落ち着いて、ハクラ。とりあえずもしかしたらここも危ないかもしれない。大学院は今のところ爆発はしてないようだから非常階段から外に出よう』 声も身体も産まれたばかりの小鹿のように震わせる白桜を、ロイスは守るように抱き締める。もちろん、演技だけども。 突然の出来事と目の前の光景をすぐには受け入れられない白桜は腰が抜けてしまったようで立てそうにもなかった。 それを最初から計算していたロイスは、白桜の肩に添えている手とは反対の手で再び白衣のポケットの中にあるボタンを、5連打で押した。 再び轟く、重々しい爆発音。大学の建物が、一瞬で真っ黒な煙の中に姿を消した。ついに白桜は目も耳も塞いでぼろほろと涙を流し始める。 白桜たちのいる大学院の中でも一番端は煙や炎が迫ってくることはない。それでも、目の前で現実に起こっていることはかなりの恐怖となり、白桜の足を麻痺させた。 『ひっ…ウぅ…』 『ハクラ、落ち着いて。大丈夫、大丈夫だから。僕がずっと傍にいるから、絶対に大丈夫だよ』 『せ、セラフィーナ…っ』 かろうじて身体は怖じ気づいていないディオンは白桜とロイスの元に近寄ろうとするが、ロイスはそれを鋭い視線を投げつけて止めさせた。 普段から見慣れている目とは格段に殺気も威力も違うそれに、ディオンは思わず怯む。その隙に、ロイスは白桜の鳩尾に軽く拳を埋め込み、白桜を気絶させた。 ガクン、とロイスに凭れかかった白桜を見て、ディオンは顔面蒼白になる。唇をわなわなと震わせ、今度こそ2人に近付いた。 .
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