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非常階段の手前、静けさが目立つ廊下の真ん中に立ちディオンへ視線を向けるロイス。にやり、そんな音が聞こえてきそうな不気味な笑みを顔に乗せている。 抱えていた白桜を廊下の端に横たわらせ、一度離れる前に白桜の頬に唇を押し付けた。その当たり前の仕草に、ぐっとディオンは奥歯を噛む。 『…さて、と』 『……』 『お前にはここで死んでもらうよ、ディオン』 これまで、死ねだの消えろだの幾度となく言われ続けてきたがそんなものを真に受けたことなどなかった。それはもちろん、その言葉に本気など感じなかったからだ。 傍で同じ言葉を聞いていた白桜ですら、いつもの言葉遊びだと受け止め苦笑しながらもきつく咎めることなどなかった。しかし、今の言葉と表情はどうだろう。 氷のように冷たい眼差しとこの空間一帯に漂う尋常じゃない殺気。ふざけた所なんて1ミクロンも見つからない。本気で人を簡単に殺せそうなロイスの様子に、ディオンは全身に冷や汗が流れるのを感じた。 『……ッ』 『これが何だか分かる?能なしのことだから分からないよね仕方ないから教えてあげるよ実践して、ね』 ロイスの着ていた白衣から取り出されたのは、何やら1つの黒い箱のようなもの。しかし、しっかりと目を凝らせばその黒い箱には赤いボタンがある。ボタンは、1つだけだった。 『これはね、僕が長年研究、実験を重ねて完成させた爆弾のスイッチだよ。ボタン1つで、前もって組み込まれた爆弾の順番に爆発させる』 『ぉ、まえ……!!!』 『高等部も大学も全壊、大学院も一部爆発させた。残りの爆弾はいくつだと思う?能なしには分からないか』 『何でこんなこと…ッ!!何のために爆発なんてことしたんだロイス!!!』 『何のため、だって……?愚問だな』 す、と細まった鶯色の瞳。左手で持つ爆弾のスイッチボタンに親指が添えられた。それに気付いたディオンが声を発する間もなく、再び大学院内で爆発音が轟いた。 .
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