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銃を持つことに何も感じていなさそうな顔でいるロイスに、ディオンは奥歯をギリッと噛んだ。白桜が見たら悲観することはロイスも分かっているはずなのに、戸惑う様子もない。
当たり前だ。ロイスは本当に自分以外の人間、白桜に関わる人間が憎くて憎くて仕方がなかった。
あの綺麗な笑顔も、儚く守りたくなるような雰囲気も、華奢で消えそうな身体も、全て自分だけのものにしたい。自分だけが見ていたい。他人の目に触れるのなんて我慢ならない。
『ハクラは気弱で人とのコミュニケーションが苦手だ。なのに何故か、一度親しくなった相手には絶対的な信頼を置き、無防備になる。お前が現れるまでは、そんなハクラを見れるのは僕だけだったのに…ね』
『だから俺を殺そうってか?だったらこんな大規模な爆発なんて起こす理由なんか、ねーだろ!!!』
『分かってないなぁ、能なし。ハクラが見てなくてもハクラを見てるやつはこの敷地内にゴロッといたのはお前だって知ってるだろ。あんな腐った目でハクラを見やがって……害虫は駆除すべきだし、生きてる価値もない』
『……テンメェ…ッ』
命を何だと思ってるんだ。そう叫びたかったディオンだが、ロイスに何を言っても響かないことは分かりきっていた。
こんな奴でも、白桜の大切な幼馴染みなだけあって下手に手を出せない。さらに、彼の手には銃が握られており自分に向けられているのだ。
考えろ。どうやってこの状況から抜け出せるか、考えろ。
普段使うことのない頭を必死にフル稼働させる。ちらり、視界の端に映るのは愛しいプラチナブロンドの少女。彼女を悲しませたくない。そのためには。
『……今俺を撃ったとしても、まだこの大学院は全壊してねぇんだろ??だったら、銃声を聞く人間がいるかもしれねぇ。そしたらその人間がポリスに銃声がしたことを話せば、後は簡単だろ』
『あぁ、場所が場所だからお前の死体だけがここにあるのは不振に思われる。銃声の話も上がればお前だけが銃で撃たれて死んだことが分かる。そしたらお前の身辺をポリスが調べて出てくるのがまず僕とハクラ。そう言いたいんでしょ?』
コイツは天才だ。バカの俺が下手な言葉を使って勝てるような相手じゃない。
ディオンは高まる緊張感の中で、表面上はひたすらロイスを睨み付ける。頼む、これは賭けだ。そう願いながら。
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