469人が本棚に入れています
本棚に追加
俺にはロイスを止められない。こんな狂気を纏う奴を止められるのは、奴を狂気にさせてしまった者だけ。そんなの、ただ1人しかいない。
この状況を見たとき、白桜は悲しみ一色に染まるだろう。その時の白桜の表情や心情を想像するだけでキリキリと心が痛むが、ディオンは握る拳に爪が皮膚に食い込むほど力を入れて気を逸らした。
『だったら、銃声を聞く人間がいなくなればいいだけの話だ。まだまだ、爆弾は残ってるんだし、ね』
そう言いながらもボタンが押される気配はない。やはりそう簡単にはいかないか、とディオンは少しだけ焦る。
ここでロイスがボタンを押し爆発をさせればその音で白桜が目覚めるかもしれない。そしてこの光景を目にしてディオンが叫ぶようにしてロイスのしようとしていることを語れば、彼女は必ず奴を止めるだろう。
そう、ディオンは確信していたが要はどうやってロイスにボタンを押させるかだ。
白桜がどれほどの力で無理矢理気を失わさせられたのか分からないが、ロイスのことだ。銃声の音だけで目覚めさせるような淡いやり方はしていないはずだ。
だが、段々とこちらに近付いている爆弾を爆発した音で目覚める可能性があることはロイスにも分かっている。先程の爆発音ではまだ足りない。
もっと近くにあるであろう爆弾を爆発させなければ、白桜は目覚めない。
『まぁどうせ、お前を殺した後にここを爆発させれば銃声を聞いた人間も消せるから後回しにするよ』
『……既に何人かは敷地の外に出て助かってるかもな。さすがにレスキュー隊がたくさん到着しているだろうし』
『ふっ…そんなこと僕が易々とさせるわけないでしょ。きちんと場所は考えて爆弾を仕掛けてるんだから。たとえ爆発に巻き込まれていなくても、出入り口が塞がれれば校舎内にいた人間は逃げられない』
『お前……つくづくゲス野郎だな』
つまり、ロイスはこの敷地内にいた人間は1人残らず逃がすつもりはないのだ。恐らくレスキュー隊を手持ちぶさたにするようなことまで仕組んでいるんだろう。
先の先まで読んでいるのだ。そんなことは、天才と謳われる彼には容易いこと。だからこそ、天才は狂気と紙一重なのだ。
.
最初のコメントを投稿しよう!