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爆弾のスイッチをロイスにどうやって押させるかしか考えられないディオンは、気付いていない。爆弾を爆発させると言うことは、その分の犠牲者が必ず出るということを。 白桜を中心に世界が回っている2人は、白桜以外の人間には淡白で無関心なのだ。唯一、ディオンはロイスよりも命の尊さを知っているというだけで根本的な所はほぼ同じである。 『…さぁて、そろそろお喋りは終わりだディオン。安心しな、ハクラは僕が幸せにするしハクラの中のお前ごと消してやるよ』 『それはいくらお前でも無理だと思うぜ。セラフィーナは絶対に俺がいなくなった後、悲しみに暮れる。セラフィーナはそれだけ俺のことを愛してくれてるからな』 『ハッ……寝言は寝て言え。まぁ、今から永遠の眠りにつかせてやるけどね』 『まさか。俺は嘘が嫌いだから絶対的な自信がないことは言わねぇよ。お前1人じゃ無理だ。セラフィーナを幸せにするのは』 今出来る最大の挑発をする。ロイスの顔つきは相変わらず涼しく変わらないが、すっと細められた瞳に確かに苛立ちの炎をディオンは確認した。 『お前のセラフィーナへの愛は重過ぎる。きっといつしか、その重さに耐えきれずセラフィーナは逃げ出すだろうよ。あいつは優しい奴だけどなぁ、その優しさは絶対にお前だけに向けられる日なんて来ねぇんだよ』 『………ハクラは何があっても僕を裏切ったりはしないさ。たとえ僕から逃げようなんて思った日には、あの細い手足に頑丈な鎖を雁字搦めに巻きつかせて僕だけしか知らない場所に一生閉じ込めておけばいいだけの話だからね。もちろん、ハクラが困らないように身の回りの世話は僕がする。僕がいなければ生きていけないようにね』 ロイスに深く愛されすぎたプラチナブロンドのお姫様。ディオンの眼の端に映る彼女に、鎖などは似合わない。華やかな、愛らしく美しい笑顔こそが、彼女に何よりも似合うもの。それを、目の前のこいつに奪われるわけにはいかない。 .
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