10

18/24
前へ
/275ページ
次へ
ぐ、と足腰に力を入れる。拳を強く握りしめ、陸上で培ってきた筋力を動かす準備を始めたディオンに伴い、ロイスはいよいよディオンへと向けていた銃の引き金に指をかけた。 『言いたいことはそれだけ??ハクラに伝えたいことがあるなら今のうちに言っておいてもいいよ。それがハクラに伝わらないのは分かってるだろうけど』 『生憎、俺にはまだまだやりたいことがあっからよ、こんなところでお前に殺されるわけにはいかねぇんだわ』 『つくづく、根性だけはあるなお前。まぁ、能無しだから根性くらいなきゃやってられなかったんだろ。でも、いくら陸上で鍛えてきた身体だって、銃を撃ち込まれればそれで終わりだ。残念だったね、ディオン』 世界の終わる音がする。あの、3人で笑い合い、ぶつかりながらも穏やかに過ごしていた日々という、小さな世界。 『これで終わりだ。ディオン』 さようなら。同じ人を愛した同志よ。来世では、二度と会わないことを願ってる。 『死ね』 ――――――――パンッ ――――――――ドッゴォォォォォンンッッ!!!!!! 最初の音は、次の音に、呑まれた。 あまりにも大きすぎる爆発音に、それまで意識を失っていた白桜の肩が跳ね上がり、長い睫で縁取られた瞼が持ち上がった。 ガラス細工のような丸い銀色の瞳に映っていた光景は、にわかに信じがたいことで。白桜は息をするのも忘れて、大きく目を見開いたまま固まった。 『…っ、き、さまぁあああああぁ!!!!!』 そんな叫び声は、ずっと一緒にいた10年間、一度も聞いたことがなかった。一体自分の眼の前にいる、よく知る人の顔をした彼の中身は誰なのか。そして何故、兄のように慕っていた人の腕から赤黒い血が流れているのか。 一瞬で判断出来るなんて、いくらIQ180だと呼ばれる白桜にも無理なことだった。 .
/275ページ

最初のコメントを投稿しよう!

469人が本棚に入れています
本棚に追加