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ロイスが引き金を引くよりも数秒早く、ディオンは陸上で育てた瞬発力で大きく一歩を踏み出し、そのまま跳躍力を使ってロイスの鳩尾に拳を叩き込んだ。
バランスを崩したロイスが辛うじて引いた引き金から飛び出した銃弾はディオンの左腕をかすり、ディオンに吹き飛ばされたことにより地面に身体を叩き付けられた衝撃で、ポケットの中にあった爆弾のスイッチが押され、爆弾が爆発したのだ。
くるくると回転しながら冷たい床の上を滑る銃に、ディオンは右腕を伸ばしたがそれよりも早くロイスが咄嗟に身を起こし、手に取った。そしてそれを再びディオンへと向けた時。
『ロイス……っ!!!!!』
響き渡った、悲鳴。白桜が目を覚ましていたことに気付いていなかったロイスは、目をこれでもかというほどに見開いて、視線を声の方へと向けた。
腰が抜けたように床に座り込み、可哀想な程に顔面蒼白になっているプラチナブロンドの美少女。決して、見られてはいけない場面を見られてしまった。
『ロイス…どう、して……』
細い金属の線を思わせる、繊弱な震えを帯びた声。信じられない、信じたくない、だけど目の前の光景は明らかに現実で。白桜は縋るような思いでロイスを見つめる。
銀色の瞳に真っ直ぐな視線を注がれているロイスは、大幅に計画とずれてしまった現状をどうすべきか、天才頭脳をフル回転させた。ものの数秒で最善の答えを導き出したロイスは口を開く。
『ハクラ……愛してるんだ…だから…っ…もう、我慢出来ない……』
『え……?』
『許せないんだ。ハクラと話してるやつ、笑い合ってるやつ、触れているやつ……男でも女でも、許せないんだ』
『ロ、イス…??』
『どうしたら僕だけのものになるんだろうってずっと考えていた。簡単なことだった…ねぇ、ハクラ』
もうこの時既に、白桜にはロイスが正常だとは思えなかった。真っ黒な闇をちらつかせた瞳に背筋が氷りそうで、ロイスがいつものロイスに見えない。恐怖ばかりがどんどん膨らんでいった。
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