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五十嵐響也side 話し終えたハクちゃんの頭をオレの肩口に押し付けながら、細く脆い身体をきつく抱き締める。途中から嗚咽混じりに、途切れ途切れになりながらも最後まで話してくれたハクちゃん。 こんなに小さな身体にあんなに重いものを1人で抱えていたのかと思うと、心臓が潰されそうだった。 「話してくれて、ありがとう」 「っ…ふぅ、うう」 言葉が、出てこない。何て声をかけたらいいのか、分からない。だけどそれでいいのかもしれないと思った。今ハクちゃんに必要なのは、思いっきり泣くことなんだ。 ディオン・フィリップスはあの後、現実を受け入れたくないとでも言いたげな顔で去った。何か言いたげなハクちゃんを止めて、帰ってきた家。 オレの部屋、ベッドの上、泣いている好きな女の子。危ない状況だけどここで無理矢理押し倒すほど、オレも落ちぶれていない。 しばらくそうして泣いていたハクちゃんだったけど、泣き疲れたのか、規則正しい寝息が聞こえてきた。そっと身体を離して顔を覗き込んでみる。涙の跡が頬に残っていて、それを親指でくいっと拭った。 「ハクちゃん…」 あぁ、ダメだなオレは。こんなに弱り切っているハクちゃんには絶対に手を出さないって思っていたのに。とっても、揺れている。 ハクちゃんの過去。その過去があったからこそ、オレたちは出会えたのかもしれないけれどやっぱり気持ちいいものではない。好きな子に、オレなんかよりずっと大切だった奴がいたなんて。 しかもそいつはもう死んでいて。生きていたらそいつにオレが勝てたか分かったかもしれないのに、もう死んでいるから。永遠に、オレはそいつには勝てない。ハクちゃんの中で、永遠に特別な存在として生きるんだ。 オレってこんなに心、狭かったんだ。知らなかった。ハクちゃんに出会ってから知らない自分を知ることが増えた。 ハクちゃんを好きになってから、知りくないこともたくさん知った。 .
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