469人が本棚に入れています
本棚に追加
玖珂白桜side
いつの間にか私は泣き疲れて寝てしまったらしく、目覚めた時には既に朝日が昇る時間帯だった。ふと何かに包まれているのを感じて顔をあげると、私のお腹に腕を回して寝息を立てている響也さん。
1人で目覚めなかったことに、隣に誰かがいることにほっと息をつく。しばらくすると響也さんの瞼がゆっくりと開いて、柔らかく蕩けるような声で「おはよ~」と挨拶してくれた。
そうして朝が始まり、学校に行き、日常を過ごす。ディオンは転校2日目にして既にクラスメイトとも仲良くなっていた。最初はちょっとぎこちなかったけれど、それでも素直なディオンはすぐに昔のように接してくれる。響也さんとディオンはあまり仲は良くないみたいだけれど。
誰かに自分の過去を話したことがなかったから、声に出して話したからか、心はとてもスッキリとしていた。私の過去を聞いても、何一つ態度を変えず笑いかけてくれる響也さんとは恋人という関係も続いている。
でもたまにキスをしたり手を繋いだりするくらいで、それ以上のことは望まれないし私も望んでいない。今の、ほくほくする関係が好き。
お昼休みになったら天磨さんと和遥さんが教室に来て、叶貴さんはめんどくさそうに、ディオンと響也さんは当たり前のように隣に座る。そして、みんなで昼食を食べる。
最近、やっと仲良くなれた気がする女の子友達と、放課後にクレープや肉まんを食べ歩いたり。休日には映画やカラオケ、バイキングなんかも初体験した。
普通の女子高校生らしい生活を送れていることがとても幸せで幸せで。いつからか、玖珂家の人達のことを考えることもなくなった。もちろん、会うこともない。
彩人さんと唯弥くんは学校で会うけれど個人的に話したりはしない。槙志さんは校長先生として忙しいせいか、学校でも全く会わない。聖瑛さんはそれ以前の問題だ。
こんな平凡で幸せな生活の中にいると、過去のことやロイスのこともきちんと思い出に出来るような気がする。
そんなことを思う、12月下旬の今日は終業式。
.
最初のコメントを投稿しよう!