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突然の私の行動に驚いたのか、和遥さんは一瞬、身体をビクッとさせてそのまま硬直させてしまう。安心させるように、頼りないけど広い背中を優しく摩った。 「和遥さん、あなたはとても優しい人だから…断ることが出来ないことも、誰かに相談出来ないことも分かります。だけど、和遥さんが傷ついたら悲しむ人がいるんです。私は、とても悲しい」 「……」 「こんな私では何の力にもなれないかもしれないけど…、何か出来る事を探すことくらいは出来ます。お願いです、1人で抱え込まないで下さい」 「…白桜、さん」 弱弱しく、おずおずと和遥さんの手が私の制服を掴む気配を感じた。心なしか、声が潤んでいるように聞こえて、さらに抱きしめる腕に力を込める。 すると和遥さんの弱弱しかった腕は私の背中をかき抱くように強くなり、あまりのギャップに声をあげそうになったけれど、寸でのところで耐えた。 「すみ、ま、せん……でっ、でも…ぅう、嬉しく、て…っ」 「はい」 「あ、ぁあ、ありがとう、ごっございます…」 「はい」 ちょっと私に、似ている人。自分に自信が持てなくて、気弱で、臆病。 似た者同士だからこそ理解しあえることがたくさんあるはずだから。彼が困っているなら、何かしてあげたい。 しばらくそうしていたけれど、和遥さんが落ち着いた頃に場所を移動した。近くにあった非常階段の一番下の段に腰掛ける。 そして和遥さんは、最近、さっきの人たちにお金を持ってくるように脅されていた経緯を話してくれた。 どうやら、和遥さんのお家はお父さんが病院の院長であるため裕福な家庭らしい。それを知ったさっきの人たちが、お金を持ってこなければ動けなくなるまで暴力をふるうと脅してきた。 これから大学推薦などが始まる大事な時期にそんなことをされたら、お父さんと同じ医師になるという夢が遠ざかってしまう。 だから仕方なく、今はコツコツと貯めてきたお小遣いの中からお金を渡した。でもそれも長く続くはずがない。 これからどうすればいいのか、不安だらけの顔で落ち込む和遥さんを前に、私はただ彼の背中を撫でることしか出来なかった。 .
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