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あれから冬休みに入り、世間はクリスマスと年末年始の準備で忙しない空気が漂っていた。どうやら日本は年賀状と言うものがあるらしい。今ではメールで手軽に済ませる人も多いらしいけど、学校の先生や目上の人には年賀状を送るのが主流なんだとクラスメイトが教えてくれた。 私の頭はもう年明けなんて1年は早いなぁと呑気に考えてたけど、響也さんは違うらしい。明日のクリスマスイブが楽しみで仕方がないって顔を隠さない。 クリスマス……アメリカでは家族と過ごすのが普通だ。毎年、両親とロイスの家族と過ごしていたからクリスマスを意識すると気分が重くなる。それでも、響也さんは明日のクリスマスイブにイルミネーションを観に行こうと誘ってくれたから憂鬱な気持ちには蓋をした。 「ハクちゃん、しっかり防寒しないと夜はとっても寒いよ~。マフラーぐるぐるに巻こっかぁ」 そしてクリスマスイブ。イルミネーションは夜からだけど早めに家を出てご飯を食べに行くらしい。昼間は太陽が出てるからマフラーはいらないかなと思っていたら響也さんに顔の半分をマフラーで巻かれてしまった。 ちょっと苦しいけれど響也さんがこれでよしっと満足そうなので、そのままで外へ出た。太陽が出ているとはいえ、肌に触れている空気はひんやりとしていて震えを誘う。 「はい、ハクちゃん~」 自然と私に差し出す響也さんの手を取り、駅までの道のりを歩き始める。繋いでいる響也さんの手は冬の寒さとは裏腹に、とても熱くて少し驚いた。 「幸せだなぁ、ハクちゃんとこうやって手を繋いでクリスマスイブにデート出来るなんて~」 「でっ、デート…」 「あ~赤くなってる~可愛いなぁ」 クリスマスに男の人と2人きりでデートをするのはもちろん人生で初めて。未だに恋人というものがどんなものなのか分かっていない私は、こんな時、どんな風に振る舞えばいいか分からなくて視線を泳がすことしか出来ない。 そんな私を理解してくれている響也さんは、優しくて甘い瞳で大丈夫だよと語りかけてくれる。男らしくリードしてくれる響也さんの後ろを、マフラーに顔を埋めながら歩いた。 .
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