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それから電車でちょっと都会な街まで行き、オシャレなレストランで早めの夕御飯を食べた。クリスマスイブというだけあって、カップルが大勢いる。本当に日本ではクリスマスは恋人同士で過ごすんだなぁと改めて思った。 「このパエリア美味しいねぇ。ハクちゃん、食べれる分だけでいいから、しっかり食べるんだよ~」 「はいっ。本当にとても美味しいのでいつもより食べ過ぎてしまいそうです」 「そっかそっか~食べれそうだったらデザートも頼もうねぇ」 相変わらず響也さんは優しい。全部食べれそうにない私のことを考えて言葉をかけてくれる。でも、私が食べている姿を見ているときの響也さんの瞳は、いつもより甘いような気がして。 「…あ、あのっ…響也さん」 「ん~?」 「そんなに見つめられると…恥ずかしい、です」 「……っ」 今は店内でご飯中だから、もちろんぐるぐるに巻かれていたマフラーは首もとにない。Vネックのグレーニットワンピースを着ているから、首もとがスースーする。 恥ずかしくて顔を隠したいのに隠せないもどかしさで、視線は落ち着かない。袖で口許を隠すことで何とか響也さんの甘い視線から逃れようとした。すると、突然目の前に座っていた響也さんがガタンと音を立てて立ち上がった。 何か怒らせるようなことを言ってしまっただろうかと、恥ずかしさが不安に変わる。目の前に座っていたはずの響也さんは、私の座っている横に来たと思ったら、そのまま腕の中に抱き寄せられた。 「ひっ、響也さん…?」 「…も~さぁ、ハクちゃん可愛すぎてダメだよぉ……ここはたくさんの人がいて、只でさえ目立ってるのにそんな顔、オレ以外の奴がいるところでしないで」 「え、と…はい。すみません…」 「いや、ハクちゃんは何も悪くないんだけどねぇ」 そう言って腕を離して元の席に戻った響也さん。いまいち、響也さんの言っている意味が分からなかったけれどとりあえず頷いておいた。響也さんの声が、切実そうだったから。 .
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