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レストランを出てからは、イルミネーションが灯る時間まで繁華街をブラブラと歩いた。可愛らしいクリスマスの飾り付けに溢れた風景。どこにいても、どんな季節でも、どこの国でも、クリスマスは平等にやってくる。 響也さんが何か欲しいものある?としきりに尋ねてくるけれど、これ以上何かを貰うのは心苦しかった。それに私は、何を見ても欲しいと思わない。 そうしている内に空は暗くなり、お店や木々に飾られたイルミネーションがキラキラと光り始めた。人通りも昼間より増えて、響也さんの握る手にも私とはぐれないようにか、力が入っている。 「…すごく、綺麗ですね」 「だよねぇ。だけどね、もっと綺麗な場所にこれから行くよ~。ちょっと人が多くて歩きづらいから、こうしよっかぁ」 そう言うと響也さんは、繋いでいた手を離して反対側の手で握り直す。それまで握っていた響也さんの手は私の肩に回されて、グッと強く響也さんの身体に寄りかかる形になった。距離がさらに近くなって、マフラーに顔を埋める。 「うん、これなら安心~」 「…あ、りがとう、ございます」 「ハクちゃんはオレのものだって、自慢したいだけなんだけどねぇ」 さらりと甘い言葉をかけてくる響也さん。甘いマスクでそんなことを簡単に言える響也さんは、今もすれ違う人達の視線を集めている。誰が見てもカッコいい人。私の、恋人。 「あ、見えてきた~」 繁華街の先に、大きなクリスマスツリーの頭が見えてきた。人混みが凄いのと、私の身長がそこまで高くないから全貌は見えない。早く見てみたいという思いが響也さんにも伝わったのか、にこりと微笑みかけられた。 人の流れに沿って歩き続けるのと比例して、どんどん大きく見えてくるクリスマスツリー。一際光り輝いていて、クリスマスソングも雰囲気を盛り上げている。そして、着いた場所には。 「わぁ…綺麗…」 思わず漏れた感嘆のため息。そこに広がる世界は、まさにイルミネーションの花畑で、大きなクリスマスツリーの下をたくさんの花や葉の形をしたカラフルな光が囲んでいる。初めて見た景色に、周りの音や人の気配も忘れて呆然と見惚れた。 .
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