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ハクちゃんのことを知るためにはまず話してみないことからは何も始まらない。 そう思ったオレは身体の中にある全部の勇気を振り絞って、ハクちゃんが登校してきた朝、教室の前で偶然会ったかのように装って。 「ハクちゃんおはよ~」 ただの挨拶を、何ともなさそうにした。 内心は心臓が飛び出すんじゃないかと思うほど緊張していて。たとえ言葉を返されなくてもいいから一瞬だけでもどんな反応を見せてくれるんだろうと期待した。 でもそれは呆気なく突き放された。ハクちゃんはオレの存在なんかここにないかのように、オレの方をちらりとも見ずに。 教室の中に、入って行った。 言葉を返してくれるとは端から思っていなかった。無視されることも予想していた。だけど。 視線すら無視されるとは思っていなかった。存在すら無視されるとは思っていなかった。思っていなかったんだ。だから、オレは勝手に傷付いて。 ハクちゃんに話しかけるのはそれ依頼、怖くて出来なくなってしまった。 今年もハクちゃんと同じクラスだったことに嬉しさを噛み締めたけれど、それと同時に一度沈みかけた欲はむくむくと浮き上がって来て。 今年こそは、ハクちゃんと少しでも近付きたい。どんなことでもいいから、近付きたい。 だから。 「ねぇ、トッキー??」 「……なに」 「オレ、頑張るねぇ」 「…なにを」 「ハクちゃんに少しでも近付けるように。ハクちゃんのことを少しでも知れるように」 「……」 真っ直ぐ伝えたオレの目を見たトッキーは咄嗟に視線を逸らした。一瞬、見開かれた目をオレは見逃さなかった。 「…好きにすれば」 「うん、そうする~」 「……」 「……」 「あの、さ」 「ん~?」 「いきなりこんなこと言うのも…あれなんだけど、」 トッキーが言いにくそうに口を開く。次に紡がれた言葉は、オレの時間を止めた。 「俺……玖珂白桜の声、聞いたんだ」 .
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