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鮮やかに煌めくそれは、クリスマスの雰囲気を醸し出す以上に華やかで、目に痛いほどだ。光の花畑に目を奪われていると、耳元で強く響也さんに名前を呼ばれて我にかえった。 「どう~?気に入ってくれた~??」 「っはい!!とても綺麗で、幻想的で…素敵なクリスマスになりました」 「……本当に、綺麗だよねぇ」 染々と噛み締めるように言葉を吐いた響也さんの視線は、何故かイルミネーションではなく、私に向けられている。不思議に思いながらも響也さんを見上げると、ちゅ、と不意打ちで軽いキスをされた。 こんな往来でキスをされたことに一瞬思考が止まる。その隙に再び響也さんの唇が降ってきて、恋人のキスへと変わっていった。そんなに遠くないところで流れているはずのクリスマスソングが、やけに小さく聞こえる。 イルミネーションへの感動の声や行き交う人々の話し声は、その時だけピタリと止んだのかと思えるほど、 響也さんの世界に引き込まれた。 「ふっ…は、ぁ」 「可愛い、ハクちゃん…」 熱い吐息の中で呼ばれた名前。この世で一番甘くて美味しいものを呼ぶような声だった。周りの目が気になるとか、こんな場所でとか、色々思うことはあったかもしれない。でもこの時の私は、響也さんとのキスに酔いしれていた。 「……まるで、口だけでセックスしてるみたいだねぇ」 そんなことを恥ずかしげもなく言われて、思わず顔をマフラーの中に隠そうとしたけれど、すかさず響也さんに両頬を捕らえられて失敗に終わった。 気温は氷点下に近いはずなのに、私たちはお互いの熱を上げていく。熱くて、熱くて、熱くて。火傷してしまうんじゃないかと危惧するほどの熱いキスは、結構長い時間続いていたと思う。 私の息が苦しくなりギブアップを伝えたことで、響也さんが比喩した、“口だけでセックス”は終わりを告げた。 顔を見合わせてどちらともなく、額と額を触れ合わせ、微笑む。楽しかったねぇ、と幸せそうに呟いた響也さんに大きく頷き返して。私たちはようやく、周りから注目されていることに気付いて、顔を真っ赤にさせたのだった。 .
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