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それからしばらくは目の前のイルミネーションを目に焼き付けて、寒さも本格的になってきたところだし、帰りの電車が混む前に家に帰ることになった。来た道を引き返しながらも2人の間に会話が途絶えることはない。 途中でお手洗いに近くのコンビニに寄った。響也さんは男子トイレが空いてたのですぐに入れたが、女子トイレは使っていたので空くまで待つことにした。 何気なく雑誌コーナーを眺める。目の前には外が見える大きな窓。だいぶ歩いてきたからイルミネーションの所よりは人通りは少なかった。忙しなく歩くサラリーマン、楽しそうに笑う友人同士、幸せそうな恋人……平和だなぁと微笑ましく眺めていた時。 ―――――知ってる顔が、道路の向こう側に見えた気がした。 あれは……和遙さん。終業式の日のことがずっと引っ掛かっていた私は、考えるより先に身体がコンビニの外に出ていた。運良く近くの横断歩道が青だったから、走って渡る。 和遙さんの顔は、本当に一瞬しか見えなかった。だって、すぐ周りにいた男の人たちの中に隠れてしまったから。もしかしたら、また恐喝をされているのかもしれない。 歩道に繋がっている小路を1つ1つ見ていく。4つ目の細い道を覗いたとき、男の人の後ろ姿が遠くに見えた。あの人は関係ないかもしれないけど、確認のために私はその道に入った。 大きな歩道はイルミネーションがあちこちにあったし、クリスマスだからお店も華やかで夜だけどとても明るかった。でも今歩いてる道は真っ暗と言っていいほど暗い。頼りは小さな街灯のみだった。 「何で持ってねぇんだよ!!?あぁ!?」 突然怒鳴り付けるような声が聞こえてきて、思わずその場に座り込む。その後、何かを話してるようだったが、少し距離があるのか、何を言っているのか分からなかった。でも次に聞こえてきた音に、手が震え始める。 ――――――ドンッ、ガッ、バゴッ。 私は怖くて、ただその場に蹲ることしか出来なかった。和遙さんが殴られているのかもしれない、そう思うのに身体は鉛のように動かない。ぎゅっと目を閉じて、早く終わってと願うだけだった。 .
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