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響也さんに連絡をしてない、と私が顔を青くさせたのは、病院に着いて和遙さんが治療を受けている間だった。携帯の電源をいれれば、着信履歴が響也さんの名前でぎっしり埋まっていた。 すぐにかけ直さなきゃと発信ボタンを押そうとしたとき、再び響也さんから着信がかかってきて、反射的に通話ボタンを押す。 『ハクちゃん…っ!!?』 「あ…」 『今どこにいるの!?何かあったの!?大丈夫!!?』 「ご、ごめんなさいっ…!!私は何ともないです…連絡が遅くなって本当にすみませんっ」 携帯を耳に当てる前に、響也さんの焦り声が聞こえてきた。走っていたのか、大きく息切れをしていて苦しそうだった。 自分の失態に今さら気付いて申し訳なさが増す。今いる病院、和遙さんのこと、謝罪を1つ1つ述べ何とか響也さんが少し落ち着いたのが電話の向こうで分かった。 『本当に……よかった…とりあえず、オレもすぐにそっちに行くから待ってて。あと、テンテンとカズくんのご両親にも連絡入れておくから』 「ありがとうございます」 『……ハクちゃん、大人しく待ってるんだよ。どこにも行っちゃダメだからね』 「はい…」 通話を切って、治療室の前にある椅子に腰が抜けたように座った。あんなに私を大切にしてくれている彼に、大きな心配をかけてしまったことへの罪悪感で胸が痛い。 それと同時に、救急車の中での和遙さんの様子を思い出しても罪悪感で心が埋め尽くされる。殴られて腫れた頬、口から滲む血、服に隠れて見てないけれど恐らく服の下にも殴られた痕がいくつもあるんだろう。 和遙さんが恐喝されていたことを知っていたのに、たとえ和遙さんとの約束だったとしても、私は誰にも言わず何もしなかった。 治療室に入る前に、お医者さんは命に別状はないと言っていたけれど、外傷は相当のものだった。話すこともままならない状態だったし、何より和遙さんはあまり身体が丈夫ではない。 いつだって私は何もできない。大切な人を守れない。無力すぎる自分は、いつになったら変われるんだろう。 .
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