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停止した思考。
何の冗談かと目の前の幼馴染みを見下ろす。でもその漆黒の瞳には嘘偽りの影は皆無で。
「え、と……」
やっと声を出せたのに出てきたのは、そんな情けない言葉にもならないものだった。
「……ホント、に??」
「…あぁ」
「どこ、で…」
「教室」
「いつ?」
「……この前の月曜日。全校集会があったとき」
「全校、集会…」
この前の全校集会のことを思い出した。トイレに行ったと思ったトッキーは、そのまま集会に戻ってくることはなくて。
オレよりも先に教室の中にいたのを見てどうしたのかと聞いたら。お腹壊してずっとトイレにこもってた、と言っていた。
確かにいつもハクちゃんは全校集会や学校行事などには一切参加しない。それなのに学校を休むこともなく、保健室で時間を潰していると聞いたことがある。
「…ハクちゃんと、話したの??」
「……いや、話してない」
「じゃあどうして…」
「……担任と話しているのを、聞いた」
「あ~なるほど」
それなら納得。たとえ誰とも話さないハクちゃんでも、担任とは絶対にどこかで話さないといけないときもあるだろうし。
もしかして最近、担任のスメラギを睨んでいたのってそれが原因なのかな。
「トッキーさ、最近よく担任を見て睨んでるでしょ~??それが原因だったってこと?」
「そ、れは…まぁ、そうだな」
「……やっぱりトッキーもハクちゃんのことが気になるんだねぇ」
「はぁ!?ちげーし、あり得ない」
「…ふぅん。で、ハクちゃんの声ってどうだった~?やっぱりキレイ??それとも可愛い??」
「……よく、覚えてねぇ。興味ないし、一瞬だったし」
「へぇ~」
まだ興味ないと言い張るんだ。相変わらず素直じゃないなぁ、トッキーは。でも気持ちは分からなくもない。
お姉さんのせいで女嫌いのトッキーが声を聞いたくらいで1人の女の子を意識するなんて、よっぽどだし。認めたくないだろうな。
このまま認めずに、動かないでいてくれたらオレとしては嬉しいんだけど。
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